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映画・本の感想とかメモとか考察とか

さようならを告げる物語<歌おう、感電するほどの喜びを!>

たまたま手にとった本が "アタリ" だったときの喜びったらこれ以上のものはない。

レイ・ブラッドベリの「歌おう、感電するほどの喜びを!」を読みました。

新しい文庫本なのですが、「キリマンジャロ・マシーン」と「歌おう、感電するほどの喜びを!」というふたつの本をあわせた短編集のようです。

「さようなら」の詩人

川本三郎による解説文のタイトルであり、ブラッドベリを表現するのにぴったりなフレーズ。

さよならを言うときは誰でも詩人になる

という解説で引用されている言葉が(どこ発祥かは不明だが)まったくそのとおりだなと。

物語のエッセンスとしての「別れ」。ブラッドベリの描く「さようなら」は次の未来へ進むための「さようなら」ではなく、ただただ現実に別れを告げている。

私はその独特の雰囲気にすっかり魅せられてしまった。詩的で、美しい物語だ。

簡単なあらすじメモ+感想

パパ・ヘミングウェイを敬愛する主人公が、ヘミングウェイとともにタイムマシンで過去へと向かう。

ストーリーとしては単純かもしれない。でも、主人公の心情や二人のやりとりに感情が揺すぶられる。古き良き時代、最上の日に思いを馳せて泣いてしまうのだ。

  • お邸炎上 :

自由を祝うため、金持ちの家を燃やそうとする人々。家の主人と話してみたところ、家の中には貴重な絵画があることを知る。主人は家を燃やすこと自体は構わないらしいので、その絵画を引き取ることにしたのだが……?

とんちのきいた寓話のような話。

  • 明日の子供 :

生まれた赤ん坊は異次元に取り残された。人間の目からは青いピラミッドにしかみえないが、赤ん坊はちゃんと生きている。見え方の問題。夫婦は赤ん坊と同じ場所に行くことを決める。

赤ん坊が青いピラミッドというだけで十分に狂気的な物語。夫婦が今いる次元と簡単に別れを告げる、その展開が余韻を残してくる。

  • 女 :

海に漂う知性をもった"女性"。彼女は男が海に入るのを待っている。海辺にいる女性と"女性"の攻防戦のような話。

  • 霊感雌鳥モーテル :

世界恐慌の最中、職を求め車を走らせる家族。養鶏場を併設したモーテルで、彼らは奇妙な卵を見る。その卵にはカルシウムである言葉が描かれていた。

職を探しているような切羽詰まった状況にも関わらず、家族の関係がうまくいっている。その理由が面白い。

たがいにほどよく尊敬の念を欠きあっているので、けんかのために集まる。不思議な関係。

機械のリンカーンが暗殺者によって"殺された"。リンカーンは人間ではないし、殺されてはいない。暗殺者はなぜ殺そうと思ったのか、主人公はなぜ彼を放免したのか。不思議な話だ。

  • われら川辺につどう :

しなびた通りの商店街が舞台。その近くで、新しく道路が開通する。そうすれば、この道は死ぬのだ。最後の一日を描いた作品。

道路の「さよなら」を表現した作品。人がいなければ道路は死ぬ。すごい好きだ。 最後の一日をどう過ごすか、どう感じるか。卒業式のような、最後の時間を大切に過ごそうと思えるようになる。

  • 冷たい風、暖かい風 :

異国から来た観光客御一行を不審がる地元の人々。公園でじっとしていた御一行の目的は「葉の色が変わるのを眺めること」だった。彼らは夏から、冬を求めてやってきたのだ。

「北風と太陽」のような、寓話っぽい話。アイルランドのお国柄?風土?がうまく使われているのが良い。

  • 夜のコレクト・コール :

火星に取り残された最後の一人。彼は孤独を紛らわすため、自分の声を録音し、電話をかけてくるように細工をしていた。

孤独の限界に挑む主人公に、感情を揺すぶられる。この物語もまた「さようなら」の物語だ。 地球に戻る他の人間にさようならを告げた老人は、ひとりぼっちにさようならを告げる。

  • 新幽霊屋敷 :

資産家の女性が持つ素晴らしい屋敷の秘密。燃えた屋敷をそっくりそのまま作り直しても、元の古い屋敷とは違う。屋敷は古い人間を拒否し、排除しようとする。

新しく「古き良き」モノをつくることはできない。古いモノは置いていかれるしかないのか、という悲しい気持ちになる作品。

  • 歌おう、感電するほどの喜びを! :

原題 "I sing the body electric!"から訳すセンスが素晴らしい。母親が亡くなった主人公のもとにやってきた"電子おばあさん"と家族が打ち解けるまでの物語。

"電子おばあさん"というのは乳母ロボット。主人公兄弟を世話するのはもちろん、彼らを正しい方向へと導く。おばあさんの語り口はロボットというより天啓のような、心理をついた優しい言葉。感動。

  • お墓の引っ越し:

老いた女性が、若い頃亡くなってしまった男性の墓を掘り起こす。男性は死んだときから年をとっていないが、彼女はすっかり年老いてしまっていた。しかし……

  • ニコラス・ニックルビーの友はわが友 :

ある夏の日、少年のもとにやってきたチャールズ・ディケンズ。 (チャールズ・ディケンズ - Wikipedia)もちろん、チャールズ・ディケンズは既に死んでいるはずで、彼は偽物に違いない。それでも、少年は彼に魅せられる。

落ちこぼれの小説家がどれだけ努力したかを語る。努力しても実ることはなく、ついに"自分を殺した"ことを語る。瞬間精密記憶(フォトグラフィック・メモリー)によってチャールズ・ディケンズの著作を正確に語れるようになったことも。

自分を偽ることはきちがいじみているのか。成功できない人にこそ読んでほしい。そして、考えてほしい。

  • 大力(だいりき) :

"大力"とよばれる男は、三十一にもかかわらず結婚と無縁でいつまでも子供のような生活を送っている。母親は咎めることも追及することもできない。

筋肉強い。現代だとそこまで不思議じゃない話なのがなんとも皮肉。

ロールシャッハってなんのことかと思ったら、ロールシャッハ・テスト - Wikipediaというものがあるらしい。かつての偉大な精神医学者が、なぜ突然姿を消したかを語る。視覚の欠落・そして聴覚の欠落。彼が感じていた世界は全く正しくなかった。

ロールシャッハのシャツ。その柄が何に見えるか。その答えからわかることはなにか。ニューポートの海岸沿いのバス、という舞台が物語をより一層豊かにしてくれる。

  • ヘンリー9世 :

すべてのグレートブリテンの人々が<島>を去る。夏へ移動する。残るひとり、ハリー。彼は変化を望まず、永遠の8月を拒んだ。

ブラッドベリの物語は、例えより良い未来・変化だとしても、それを拒否する人間を描いている。 それが"きちがい"じみているのかは分からない。間違っているとは思えないのだ。

  • 火星の失われた都 :

火星人の残した都市を尋ねる一行。パニックSF映画でよくある、登場人物ひとりひとりがひどい目に合うアレ。 登場人物の性格や職業にあわせて合う災難は皮肉が効いてて良い。

  • 救世主アポロ :

ポエム、というか詩である。SFだけど、賛美歌のような詩歌。

さいごに

さようならを言う。それは悲しいことかもしれない。それは心揺さぶられることかもしれない。

明るい未来を思い描きたい。前へと進まなくてはいけない。

でも、そんな期待や希望が重苦しい感じ、忘れたくなるときもある。

ブラッドベリの物語を読むと、ただただ、「さようなら」が愛おしくなる。過去に思いを馳せたくなる。

物語にすっかり魅せられた。好きになってしまった。

人々が平成最後の夏に魅せられる。「さようなら」に魅せられるのだと痛感した一冊だった。

種々雑多<蒸気駆動の少年>

蒸気駆動の少年を読みました。

蒸気駆動の少年 (奇想コレクション)

蒸気駆動の少年 (奇想コレクション)

比較的短めの短編が多いですが、ひとつひとつの濃度は濃いです。

あと、奇想コレクションは「SF」作品のイメージが強く、どちらかというとSFメインの作家が選出されているが、ジョン・スラデックはSFもミステリもオカルト系も網羅している、すごい多様な作家のよう。

文章・小説という型にとらわれない作品も多々ある。

  • 「不安検出書(B式)」 はそれの最たる例で、アンケート調査用紙のフォーマットが記されている。アンケートの内容に答えていくと……?といったサブリミナルな感覚を覚える作品。

  • 「月の消失に関する説明」 や 「神々の宇宙靴――考古学は覆された」 のような科学記事を模した作品。それっぽいのに加え皮肉がきいている。

  • 「ベストセラー」 は同じ登場人物で語り手が変わっていった結果、設定がコロコロ変わってく、劇中劇のような、複雑なストーリー。出版社に取り下げられて結末を変更しました、まで書かれちゃうのだからすごい。

といったように、とても遊び心に溢れている。

簡単な感想

せっかく収録されている短編が多いので、メモ代わりに簡単なあらすじ・感想を書く。(短編のあらすじ・作品名って意外と思い出せないので、検索してしまうことが多々ある。という反省を込めて)

全部書くわけではないが、収録順で。

  • 古カスタードの秘密:のっけから置いてけぼりくらう作品でびっくりした。夫婦の家の中でのドタバタ劇なのだが、家電が勝手に動いたり、地下とキッチンで無意味な交信をしていたり、ナンセンスな雰囲気が漂う。世界観が不思議でいっぱいな作品。

  • 超越のサンドイッチ:宇宙人セールスマンが人間の主人公に「知恵」を売る。届く荷物にはサンドイッチとテキスト。そのサンドイッチを食べるとテキストの内容がすんなり理解できる。知恵を育てる方法に「プラナリア」のような伝達方法を用いることで… アイデアはシンプルだけど、SFっぽさが光っていて面白い。

  • 最後のクジラバーガー:食事を食べるショービジネス、ツギハギの体で生きている夫婦。すべてが家の中で完結するハイテクな世界なのに、家にまで広告が流れて会話が途切れるとか、そことないディストピア感がある。夫婦の在り方・人生について凝縮されていて、少し切ない気持ちにさせられる。

  • 高速道路:アメリカの高速道路も日本と同じような道路なんだろうか。アメリカという広大な土地で延々と同じ景色の道を走っているバスを思わせる作品。リゾートへと向かうバスに乗っている主人公が乗り継いで乗り継いで、そのうち、ランニングマシーンのように同じ道を繰り返していることに気づく。降りても待っているのはなにもない孤独。

  • ゾイドたちの愛:"本物人間"の場所を間借りしてひっそり生きている"ゾイド"たち。人間なのに、人間からは視えない(視認されない)、必要とされない、醜い人間。解説曰くホームレス問題を風刺したものと考えることもできるようだが、同じ人間でも見て見ぬふりをされる存在、というのはいろんな対比として重なりそうでもある。

  • 血とショウガパン:ヘンゼルとグレーテルの残酷描写モリモリバージョン。暖炉の火に幻視するナチス強制収容所、という背景があるらしいが、それを抜きにしてもヘンゼルとグレーテルがめちゃくちゃ残酷である。

  • 不在の友に:宇宙酒場でロボットが語る彼の物語。その物語には分析や問いかけは――あっ!

  • 小熊座:ホラーな話。くまのぬいぐるみがインディアンの呪詛云々……。ジェレミ・ベンサムの標本が本当に存在してるとか、 (ジェレミ・ベンサム - Wikipedia)ゴーストダンスとか、それっぽい嘘かと思ったら本当なのが恐ろしい。

  • ホワイトハット:人間の体を馬のように操るなぞの昆虫型の宇宙人。彼らはなぜか、人間を操って西部劇ごっこを繰り広げる。西部劇っていうのが子供の遊びの延長線のようで滑稽だ。

  • 教育用書籍の渡りに関する報告書:ちょうど最近"積読"がBBCで特集されて(Tsundoku……積ん読 それは本を買い、決して読まない技 - BBCニュース)話題だったりするが、この短編はまさに積読の本が主人公である。読まれることのない本たちが、突然空へ羽ばたいていく。それは群れをなし、他の本たちも一緒に"集団自殺"へと向かうのだ。読んだあと、謎の感動が生まれる作品。

  • おとんまたち全員集合!:大人たちはいつまでも子供でいたい、そして遊びやレジャーに夢中。対する子どもたちははやく大人になりたくて、勉強をし、大人たちから仕事を奪う。そんな皮肉のきいた作品。

最後に

個人的には「超越のサンドイッチ」とか「教育用書籍の渡りに関する報告書」が好きだと思った。

ゾイドたちの愛」や「高速道路」や「最後のクジラバーガー」など、ちょっと孤独や切なさを感じる作品は、なかなか味がある。

夏のSF<逆光の夏>

猛暑が続く毎日、夏っぽいSFを読みました。

ジョン・ヴァーリイ「逆光の夏」

実は随分前に買って積読したままでした。ようやく読み終わった。

感想

この短編集はすごい。有名作品を集めた短編集なのかな。

ジョン・ヴァーリイという作家の世界観が伝わる作品でした。

  • 逆行の夏

表題作。水星に住む主人公のもとにクローンの姉がやってくる。初っ端から独自の世界観が全開で驚いた。表紙とイメージが違う

《八世界》(The Eight World) とよばれる未来史に基づいた世界観。人間が太陽系の惑星に移住していたり、遺伝子操作してたり。新鮮。

逆光の夏では、主人公の出生の秘密が鮮やかなボーイ・ミーツ・ガールのなかで語られます。水星が半分はずっと太陽の方を向いているわけではない、という事実をうまく扱ってるのがいいですね。

表題作と同じ世界観、こちらは冥王星が舞台。

自然豊かな海で二度目の少年時代を過ごす主人公ピリ。最後まで読むとタイトルがしっくりくる。 大人から子供に戻ることができても、ほんとうの意味で子供ではない、複雑な状況ゆえの葛藤が面白い。

蛇足: おなじタイトルでドラマが放映されていたようで、すごく気になる。今旬の田中圭さんが主演。さよならロビンソンクルーソー - Wikipedia

  • バービーはなぜ殺される

これは発想の勝利だと思った作品。

バービーというのはバービー人形のこと。量産品のように、みんなバービーの姿形をしていれば平等じゃない、というやばい新興宗教で起こった殺人事件。 殺されたバービーも、殺したバービーも、他のバービーも、全員同じ姿形で、差異が存在しない。犯人は誰だ?

こういうヤバイSF設定にミステリー要素がぴったり合っていた。映画ブレードランナーのようなハラハラさせる展開で面白い。

  • 残像

今回一番キタ作品。最初のコミューンのくだりからはじまり、どういう主題かわからないまま読み進め、気がつくとラストまで一気に読んでしまった。

それぞれが独自のコミュニティーを築き上げている中、ヘレン・ケラーのような視覚と聴覚の重複障害者たちだけで暮らすコミューンが存在した。

目も耳も聞こえない彼らは独自のボディランゲージを持っていて、独自の、彼らしか「視えない」ものとつながっていた。

この独自の世界に出会い、衝撃を受ける主人公の心情。ある意味でファーストコンタクトもののような感覚を覚えたし、ラストの展開は考えさせられる。

削ぎ落とされた機能は、マイナスとは限らない……

  • ブルー・シャンペン

愛とか恋とかを知らない主人公が、黄金を身にまとったセレブ美女に出会うことで変わっていく話。

といえばSFっぽさはないが、黄金のジプシーの秘密とか、彼女の夢とか、舞台となる観光地「バブル」の鮮やかな情景との親和性が良い。ふたりとも不名誉な二つ名を持っているとかも。

「さよなら〜」でも思ったけど、ヒロインじゃない方の女性キャラクターが(精神的・肉体的に)強くてすごく好きだな。

ブルー・シャンペンだとアンナという女性がそれにあたる。彼女は主人公のセフレに「なってあげてた」んだけど、主人公の未熟さを見抜いてたし、状況によってアドバイスしたりしなかったり、人生設計の軸がちゃんとしてるところがすごく好感を持てた。

  • PRESS ENTER ■ 

サスペンスのような、アメリカの陰謀論を扱ったような作品だった。

コンピューターを使えばなんでもできることが恐ろしい、という気持ちにさせられる。

とはいえヒロイン(?)のキャラが濃い。アジア系の巨乳のギークである。あと壮絶な過去持ち。ギャルゲーでもそんな要素モリモリしない。

そればかり気になってしまった自分とはなんなのか。。

総括

  • 夏要素

意外と海を扱う作品が多かった。

恋に落ちた二人が海を泳ぐ、というのはなんとも美しい描写だな、とも思う。

  • 障害

《八世界》の世界をはじめとして、当たり前のように遺伝子操作とか見た目を変化させる描写・世界観である。

障害を持っていたり、何かが欠けていたり。

それゆえに残酷な描写も、妖艶な描写もある。

SFならではのウマミがつまった作品だった。

怜悧で官能的なヴィジョンがあふれる6篇

とBOOKデータベースの紹介に書いてあるけど、まさにそのとおりである。この内容文書いた人天才だな。

卒業<関ジャニ∞のはなし>

注意:この記事はジャニオタのポエムです

自動販売機の広告にはこう書かれていた。

おとなには、卒業がない。

いつ始めても、

いつまでやっててもいいってことだ。

おとなになると、卒業することがなくなる。

学生ではないのはもちろん、組織に所属すれば卒業ではなく退職になる。

そこに卒業のようなノスタルジアは存在しない。青い春は存在しない。


渋谷すばる最後の関ジャムに、卒業をみた。

関ジャニ∞、7人として最後の演奏。それぞれの気持ちが痛いほど伝わった。

悲しさこそあれど、素晴らしい瞬間だった。 長年連れ添ったメンバーを送り出す瞬間だった。

卒業だった。


アイドルって、ずっと続くと思っていないか?永遠だと思っていないか?

ファンも、ときには本人たちも、そう思っているんじゃないだろうか。

違うんだ。いつまでやっててもいいだけなんだ。

いつ終わってもいいものなんじゃないか、本当は。


広告はこう続く。

甘くない。

引きずらない。

もう、青くない。

イオンウォーター ギャラリーより

関ジャニ∞は6人として続く。

彼らの青春を、彼らが走り続ける限り、見届けたい。




と、ここまで書いて、"酷いポエムだな"と公開するのを躊躇っていたらレンジャー(ジャニーズウェブの連載)が更新されていた。

錦戸さんの連載がすごくデジャヴだったので、こうなったらデジャブする形で書き足す。

「卒業」じゃない「中退」だ、という願いはすごく納得した。

「中退」ってネガティブなイメージで使われる言葉だけれども、敷かれた道じゃない方を選ぶ、という意味ではぴったりだし、挑戦という意味合いが感じられた。

挑戦。

永遠じゃなくても、いつまで続くかわからなくても、構わないから。

札幌、楽しみにしています!!!!

"良いストーリー"とはなにか<紙の動物園について思ったこと>

ケン・リュウの「紙の動物園」読みました。

という感想を書くつもりが、短編1つについてとりあげた考察みたいな文章を書いてしまった。

そもそも、この作品を知ったきっかけはtogetterのSF小説とプロットについて - Togetterという記事。

作品本編を読む前に批判的な記事を読んでしまったため、しばらく読む気はなかった。(批評は本編読んでから読むべきであったと後悔した)

先入観がある状態で読みたくなかったのだ。しかしながら、数々の作品賞を受賞した作品なのでずっと気になっていた。

紙の動物園のモヤモヤ

最初に収録されている表題作「紙の動物園」をまず読んだ。

……

……確かに↑で書かれている批判納得だなあ!

X年越しに納得してしまった。

リンクを開いていない人向けにどういう批判か?を簡単に引用する。(がっつりネタバレなので注意)

続きを読む

踏み台としての狂気<さあ、気ちがいになりなさい>

「さあ、気ちがいになりなさい」というインパクト抜群の本を読みました。

さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

推理小説ばかり読んでいた私が、SFを読むようになったのは星新一のせいだと思う。 「せい」なんて被害者的な表現が正しいかは微妙だが、最近は短編SFばかり読んでいるのは事実。

とにかく、図書館で星新一を借りて読んでを繰り返していた。図書館所蔵の文庫は大抵読み切ったと思う。それでもいまだ、読んでない作品に出会ってしまうのだから恐ろしい。

星新一ショートショートは読みやすく、オチがついてて、それでいて考えさせられる。 しかも、あんな作品量にも関わらずどの作品もぜんぜん違うストーリーなのだ。そして、一貫して星新一なのだ。

なぜこんなに星新一のことを書いているかといえば、この本は星新一の翻訳によるものだからだ。 翻訳者による作品の違いがわかるような人間ではないが、星新一の文体はすごく読みやすかった。この作品にマッチしていた。

前置きが長くなってしまったが、以下感想。

技巧

それぞれの作品には長さの違いがあれども、どの作品も「オチ」がきれいについている。これはすごい。

物語として捻りが効いている。こればかりは実際に読んでみないことには味わえない感覚だ。「こういう面白いネタ」を面白く、ストーリーとして展開していることに感動する。あらすじも、本文も面白い。

  • ノック は二段階にオチがついている、逆さ落ちの作品。ノアの方舟のSF版みたいな世界観でありながら、物語はそれとは全く違う方向に向かうのだから面白い。

  • ユーディーの法則 も同じくとんでもないストーリー。「私」の友人がすごい発明をしたと思いきや、そうじゃないと思いきや……。これぞエンターテインメント。予想ができない。

狂気

狂気を踏み台として彼自信の逆説的な世界を築いている

と訳者あとがきにも述べられている通り、狂気を扱った作品が多い。 (また、「狂気を扱う作品は日本ではまだ少なく、今後増えるだろう」とも書いてある。これは本当にそのとおりで、最近はドラマ・映画にもそういった作品が散見される。ちなみにこのあとがきは1962年に書かれたもの。)

狂気と言っても、読者の恐怖感を煽るサイコスリラーのようなものではなく「分かると怖い話」的な静かな狂気である。一番怖いのは人間だね、という考え方はホラーのみならずSFでも活躍するというものだ。(多分)

  • 最初に載っている みどりの星ぶっそうなやつら なんかはそういった狂気をオチとしてうまく使った作品。ショートショートのウマミが詰まっている。

  • ちなみに、みどりの星電獣ヴァヴェリ は物悲しさと余韻があって良いなと思った。とんでも設定が巧いだけではないのだ。

Go Mad

巻末には注意書きのように

差別表現として好ましくない用語が使用されています。……

なんて書かれている。時代だなあとしみじみする。(作品自体は1940~50年のもの)

表題作さあ、気ちがいになりなさいはそういう用語が含まれた作品なのかもしれない。主人公は精神病なのか、そうではないのか……。が主軸になると思いきや、やはりそうはならない。

すごいの一言。

おわりに

すごいからまず読んで!と言いたくなるような、 ショートショートの面白さが詰まった短編集だった。

物語は読んでこそだな。

インドとSF<サイバラバード・デイズ>

サイバラバード・デイズを読みました。近未来インドを描いた中編の連作。

サイバラバード・デイズ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

サイバラバード・デイズ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

イアン・マクドナルドという作家が好きだ!と思ったのは、(これまた)SFマガジン700で読んだ「耳を澄まして」という作品がきっかけだ。

終わろうとする世界・ナノテク・エンパスといったSF要素がきれいにコラボレーションし、ラストで一気に引き込まれる。どんどん明らかになる事実に対して、ラストできれいに収まる、物語の流れが本当にすごい。

私の好きな短編のひとつだ。

そういう訳でずっと他作品を読もうと思っていたものの、出版されているものは長編ばかりで、短編集はない。

参考:http://ameqlist.com/sfm/mcdo_i.htm

私は基本的に短編のSFが好きなのであきらめていた。長編は途中で飽きてしまう。

しかし、サイバラバード・デイズは中編小説集。これならば読めるのではないか、とチャレンジしてみた。

以下、感想。

インドとSF

まず言いたいのは、「インドSFの世界観すごい!」ということだ。

ブレードランナーに代表されるように、日本とSFは意外にもマッチする。 ごちゃごちゃしてて、少し荒廃的で、新しい。サイバーパンクを彷彿とさせるのだと思う。欧米の人々にとっては東洋という見知らぬ土地が、なおさら異世界の雰囲気を醸し出すのだろう。

https://pbs.twimg.com/media/BhuNt2YCEAAJ7y-.jpg Twitter より

一方でインドも似たような要素を持ち合わせている。

IT化が一気に加速してることや、都市部の人口密度が高いこと。色んな宗教の人々が集まり、それぞれ異なる神が存在している。

そんな訳で、この本で描かれるインドは古くからの文化を残しながらもAI・ロボット・ナノテクといった技術が発展した世界だ。

  • ガンジス川で沐浴する人がいる一方で、ロボットたちが戦争をしている。
  • AIが場所に関係なく活動する一方で、人々はファトファト(トゥクトゥク的な乗り物?)で移動する
  • 遺伝子操作で子供の性別が決められる一方で、結婚におけるカースト制度は根強く残っている

そんな世界観で描かれる物語は、SFでありながらオリエンタルで独特だ。

他に出版されている長編の設定を引き継いでいるらしく、ドラマの登場人物を演じるAIやヌートという第三の性別など独自の世界観で描かれている。

それぞれ感想

  • サンジーヴとロボット戦士

ロボット戦士、というのはどうやら日本のロボットアニメのようなロボットを描いている様子。(日本のアニメみたいな、という描写を本編ではちょこちょこしている)

主人公はロボットを操縦する少年たちに憧れているけれど、実際のところ彼らは薬物で無理やり戦闘に適応させられた少年兵となんらかわらない、というのがなんとも皮肉。戦争なんて華やかでかっこいいものではない。

  • カイル、川へ行く

今回一番好きだなと思った作品。

インドの外から、親の仕事の都合で来た主人公が、ひょんなことから家出して、地元の友人とガンジス川に行く。

たったそれだけの物語だけれど、何も知らない少年が、ガンジス川を、インドを、はじめてその景色をみた瞬間が、いかに忘れられない出来事になるかは計り知れない。

世界が一気に広がる瞬間ってこんなにも美しい。青春だなと思った。

  • 暗殺者

二つの一族の血を血で争う抗争、一族で最後の一人になってしまった娘が復讐のためだけに生きる。

少女が教養を磨いていくサクセスストーリーかと思えば、やっぱりSFだった、みたいなSF。

  • 花嫁募集中

この作品の設定では、生まれる前の子供に遺伝子操作を行えるようになった結果、男女比率で男性が圧倒的に多くなり、結婚がすごく難しくなっている。

主人公が結婚のため、専用の紳士AIと一緒に頑張る。↑の作品と同じで、人間が頑張るストーリーかと思えば、やっぱりSFだった。みたいなSFである。 作品全体通して結婚への当たりが強い。

  • 小さき女神

生き神として選ばれた少女が翻弄される話。

これまた結婚が物語のターニングポイントだったりする。元女神と結婚するってすごくファンタジックだと思うのだが、カースト制度的には不可侵、つまり触れたくない身分。

女神として生きる素質は、自分を自分から解離できるかどうか。人が死んでもなんとも思わないような、精神病患者ぎりぎりのところで存在している。女神といえども少女で、世話係は親のように彼女に接していたり、成長して女神ではなくなることを恐れているのが面白い。神性と処女性が一致しているのはどの文化も同じなんだろうか。

  • ジンの花嫁

ジンというのはアラブ世界における精霊。日本の八百万の神みたいなものだろう。

形のなき人間より優れた存在・AIはまるでジンみたいだね、というタイトルの付け方がいい。そういうわけで、この中編は外交官AIと結婚することになったダンサーが主人公の話だ。(また結婚の話かよ)

AIは複製可能で仕事中も彼女に会いにこれるし、いつでも一緒にいることができる。でも触れることはできない。子供もできない。

今までの固定概念と比較して、嫉妬したり苦しんだりする主人公。まじか、近未来な設定なのにそこ苦しむのか。主人公はスラム上がりからセレブまで成り上がった女性だから、ってのもあるかもしれないが、ちょっとしっくりこない終わり方だ。

  • ヴィシュヌと猫のサーカス

これまた独自設定。遺伝子操作され、優れた能力と人の二倍の寿命を手に入れるが、体の成長が人の半分というブラーミン。そのブラーミンであるヴィシュヌの視点で語られる物語。

彼の半生が語られることで今までの設定の総括というか、全部がつまっている。

ゆっくり成長していく彼に反して世界は急速に発展していく。意識をアップロードし、すべてのネットワークとつながるポストヒューマンの存在。ブラーミンのように生まれる前からいじくる必要がない、新しい世代。

生まれた当初はマンガに描かれ、物語の上ではヒーローだった彼は、期待された将来図みたいな、ひかれたレールの上を歩くことをやめていた。世界の危機に直面し彼がヒーローになるのは胸熱だね。

おわりに

読んでいて思ったのだが、イアン・マクドナルドの作品は唐突に場面転換したり、視点が別の人に切り替わったりするよね。(一応改行しているけど)

過去未来と流れが連続していないのに連続しているかのような感じ。良くも悪くも不思議な感覚を味わう。

ところどころ書き方が脚本っぽいなあと思った。独特の作風だ。翻訳するの大変だろうな。

  • おわりのおわりに インド人の名前って読むうえでめっちゃ頭使う。似てるけど似てない名前がいっぱいでてくる。

そして自分は長い物語読むのは苦手だと、改めて思い知った。おとなしく、次は短編集を読みます。