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映画・本の感想とかメモとか考察とか

2020年読んだ本

今年は全然ブログを更新できなかったが、読んだ本の感想をまとめてみる。

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

思い切って買い、読んだ。 新しい作品、しかも日本SFはほぼ読まないのでイマドキなアイデアベースなSFでちょっとラノベのようなライトな作風なのかな、と表題作を読みながら感じた。

しかしながら表題作の最初にR・A・ラファティを引用する作家である。 読み進めると、古今東西様々なSFを読みこんだ上で書いていることがそこかしこから感じられる。エンタメ作品だけど、研究しつくした上で書かれた作品だということがわかる。

「美亜羽へ贈る拳銃」は ハーモニー (ハヤカワ文庫JA) のトリビュート作品だけれど、単体でも読めるし、読んでいる側からすると、こうアプローチするのかとその視点に納得させられる。たまたま「ハーモニー」読んでてよかったと思った。

「ひかりより速く、ゆるやかに」はSNSなど今の世相が盛り沢山だけれどそれをうまくSFとして昇華している。今だからこそ書ける作品を書くっていうのはとても価値がある気がする。

コロナ禍でのWIREDのSF特集は来年、再来年にはまた違った趣になっているだろう。

夢幻諸島から

夢幻諸島から

夢幻諸島から

ちょっとファンタジーな表紙とあらすじに惹かれて買ったものの積読していた。 夢幻諸島の島々をA-Zの順番で紹介するガイドブックの体で書かれた小説だが、読み進めていくうちに繋がりがみえてくる。 登場人物や島の名前が何度か登場するあたりで気づいてしまうのだ。

島々の位置関係は不定だという設定ゆえに本の中には地図は書かれていないが、文章を元に自分の頭の中で地図を描き、考えを巡らせてしまう。 すごい。まさに思考させる小説だ。kindleで読んだので検索機能がとても役に立った。付箋をつけながら読むのも楽しそうである。

夢幻諸島の世界観もファンタジーすぎず、どこかにありそうに思えてくるので素敵だ。

眠れる美女

眠れる美女

眠れる美女

アンソロジーで「片腕」を読んで気になったのでそれが収録されている「眠れる美女」を読むことにした。

正直「眠れる美女」がヤバくて「片腕」が大したことないように感じられるぐらいだった。 晩年の川端康成はヤバイことがよくわかった。

「片腕」の女性から片腕を借りるモチーフもそうだが、老人が眠らされている女性と一晩を過ごすというモチーフもまた、主体が不在な女性に対する神秘性に基づいている気がする。物を言う女性にはみられないミステリアスで耽美な描写。 心と切り離されている身体からその女性を思い描こうとする偶像性の熱がよくわかる。圧巻。

来年は三島由紀夫もチャレンジしたい。

飛行士たちの話

ロアルド・ダールの短編集。作者自身が経験した第二次世界大戦が描かれている。パイロットの描写は結構新鮮。 戦争の悲惨さ、というより悲しさ・虚しさの方が強く印象に残る。

紅の豚」の元ネタともいえる「彼らに歳は取らせまい」もいいが、最初の作品「ある老人の死」が好き。死と隣り合わせの飛行戦、その臨場感と緊張感がすごい。

最後に

感想を書きたいとおもったものをピックアップして書いた。 去年より読んだ冊数は減った気がする。長編や古典作品にチャレンジしすぎたのが原因かなとも思う。

来年は感想アウトプットを増やしたいです。